ちば高齢協 平成25年4月12日 第39号
編集発行 
千葉県高齢者福祉施設協会

平成24年度 ユニットケア部会研修
日時:平成25年2月13日(水) 場所:ホテルポートプラザちば 参加:81名

        [千葉県ユニットリーダー育成に係る実地施設自己評価項目案について]
    社団法人 千葉県高齢者福祉施設協会
       ユニットケア部会長 津川 康二 氏


ユニットリーダー研修受講希望者数に対し、ユニットケアリーダー研修の実地施設が限られてしまっており、受講できない方が沢山いらっしゃいます。将来的には千葉でもユニットリーダー研修を開催できるように準備をしています。ユニットケアとは、どのようなところに視点を置けばいいのか?利用者のために何ができるのか?等、千葉県らしい調査項目を県の指導課の方と考えてきました。実地施設自己評価項目案で自施設をチェックしてみて下さい。とお話がありました。


        [千葉県ユニットリーダー育成に係る実地施設自己評価項目案について]
    講師:安東 茂樹 氏  「潮風の行方」著者
       元特別養護老人ホーム 介護主任、TBSアナウンサー安東氏の実弟

 30歳で未経験で特養に入社。それまではレースラリー等に参加していました。介護職に興味を持ったのは、祖母が施設を利用するようになり、送迎してくれるスタッフに見せる祖母の職員との間にとても温かい雰囲気が作られていることに衝撃を受け、こんなに素晴らしい仕事があるんだと、特別養護老人ホームに入社しました。

 しかし、期待感が大きかっただけに、介護職として働きだすと、3日目にして辞めようと考えた程の絶望感を感じました。日々の業務をこなすことが精一杯の現場で、ダメ職員のレッテルをはられながらも、お年寄りの笑顔や、ありがとうに支えられながら、5年後には実習生教育担当、介護主任となりました。いつしか、「その方の幸せが何か?」と言うことを考えるようになりました。もう少し、ナチュラルになって、老いと死をお互い受け入れながら、その方の幸せを考えながら、穏やかに生きてもらえるケアがもっと施設でできるようになればと願っています。と介護される方の気持ちを大切に考え、ケアできるようにとのお話がありました。


        [実践事例@]
    『新たな時代の生活支援に向けて』〜現状のチームケアに必要な視点〜
    講師:社会福祉法人 慶美会 ナーシングホーム市川
       介護教育指導室長 村越 洋子 氏

 内閣府での「高齢者の住宅と生活環境による意識調査」では、高齢者の方は在宅生活を望みながらも、施設での生活をされており、在宅とはあまりにも違う施設生活に大きな落差を感じている。との調査結果を知り、この落差を最小限にするため、ナーシングホーム市川では、平成13年、既存の施設にグループホームを作るをコンセプトに、ユニット作りを始めました。回廊を暖簾で仕切り、家具や衝立でリビングを作り、ソファー、電気ポット、植木等、自分達の家に置いてあるものや、利用者の希望を聞きながら、1グループ10人で8ユニットを知恵と工夫でくつろげる環境作りをしました。ユニットを作ったことで、職員との距離が近くなり、利用者の個別の生活をよく観て、知ることで、理解し、利用者の思いを考え、支援し、より良いアセスメント、ケア計画ができやすくなりました。

 ユニットケア開始から12年目。利用者の状況や精神的配慮も合わせて変化させてきました。施設入所ということで暮らしの場が変わることは、ユニットであっても、そうでなくても、暮らしに基本の視点を持ち、ひとつずつ心の欲求を満たし、生活を組み立て、個別の存在を尊重しながら支援していくことが大切です。と分かりやすくお話いただきました。


        [実践事例A]
    『従来型施設からユニットケア施設へのチャレンジ』
     〜変わったことと普遍的なこと〜
    講師:特別養護老人ホーム 松寿園アネックス
       サブマネージャー 平居 昭範 氏

 平成24年4月に開設。定員60名の全室個室ユニット型1ユニット10名3フロアー4階建。1階にはボランティア室、娯楽室、託児室等があり、2・3階が男女共用フロアー、4階は女性専用フロアーとなっています。ユニット開設までにはコンサルティングを活用。

 人員配置、業務内容、勤務時間、備品、日課等を、ユニット会議にて検討し、他ユニット施設への1日体験研修も取り入れました。従来型からの異動職員の意識転換、新人職員の育成には介護技術研修、プリセプターシップ制度を活用。勤務形態は2ユニット単位での勤務。入浴は曜日固定で、時間は利用者の意向を確認し対応。ユニット開設後の職員の心理的影響としてはユニットケアに対する戸惑い、日課業務に対する不安、個室というハード環境に対する戸惑い、面会時におけるご家族様への対応についての戸惑い等もありましたが、ユニットケアでゲスト(利用者をゲストとお呼びしています)との距離が縮まり、コミュニケーションが増え、精神的、身体的状況が把握しやすくなり、意向を確認する場が増えました。又、看護師も、ゲストに接する時間が増え、体調の変化が読み取りやすくなり、ケアワーカーとの連携が図りやすくなりました。

 このことから職員の意識にも変化がみられるようになりました。従来型施設と、ユニットケア施設の普遍的なことは、安心、安全なケアを基本とした介護、生理的なニーズの充足、個別的なケア、人権擁護、接遇という、サービスの原点でした。今後の課題としては、24時間シートの活用と、ケアプランとの連動、生活環境の整備と、見直しでゲストの暮らしの向上を目指すと共に、基礎介護力、認知症ケア、ニーズに合わせたサービスが提供できるように職員の質的向上に取り組んでいきます。と、開設前から現在のユニットケアの状態、今後の課題等を分かりやすくお話いただきました。


        [実践事例B]
    『介護、看護の連携〜そして施設と在宅の連携』
    講師:社会福祉法人 翠耀会 高齢者複合ケア施設 グリーンヒル八千代台
       主任・ユニットリーダー  高橋 洋一 氏

 介護とは生活の流れの中で生じる問題であり、その方の生活が根ざす地域や、家庭等に密着したケアがQOLを高めることになるのではとの考えから、地域密着型施設を平成19年に開設。定員:長期入所29名、短期入所10床、多機能25名登録の完全個室ユニット。ケア体制は2フロアー4ユニット。平均年齢86.9歳、介護度4.6(特養全体)

 介護と看護の連携への取り組みとして、介護スタッフ室と医務室の同一化。生活と身体の状況記録用紙には多職種による記録。ユニットに当日担当看護師を配置、看護師による夜勤体制、経管栄養・痰吸引研修、看護師による施設内研修の実施、PHS・携帯を使用し、直ぐに連絡が取れる体制作りを行いました。

 介護スタッフ室と、医務室のパーテーションを外し同一空間にすることでお互いのコミュニケーションが密になりました。状況記録用紙には、職種によりペンの色を変えて記入することで、24時間の状態、1週間の状態も把握できるようになり、ユニット内での記入になるので、ケアワーカー、看護師、栄養士との接点の時間が増え、コミュニケーションが図れるようになりました。又、その場でミニカンファレンスを実施することで、迅速に個別対応ができるようになりました。

 看護師による夜勤体制が必要となったのは、平均介護度4.6という現状、重症化する利用者への対応が迫られる中、胃ろう・痰吸引の必要な方、医療的な処置が必要な方の増加。オンコール体制はあるが、夜勤帯での不安の解消。と、すべては利用者のためにとの思いから取り組み、看護師の勤務時間は早番7:30〜16:30、日勤8:30〜17:30、遅番9:30〜18:30、深夜勤21:15〜7:30です。18:30〜21:15までの時間は、看護師不在となるので、オンコール体制。自宅での看取り介護では、家族との関わり方、気持ちの変化等、実践例をご紹介いただきながら、分かりやすくお話下さいました。


        [グループワーク]
8人10グループに分かれ、自己紹介、自施設での取り組み、悩み、困っていること等、情報交換、討議していただき、各グループの代表者に発表していただきました

 自施設の記録用紙を持参されての話合いをしているグループ、日々の業務をこなすことが精一杯だけどユニットになって利用者との会話が増えました。と笑顔でお話されていた方をきっかけに、うどんを温かい物と、冷たい物のどちらがいいかを選んでもらえるようになりました等、利用者さんに選択してもらえるようになった事が嬉しかったとお話されてるグループ、夜勤帯の他ユニットへ手伝いに行く時の情報共有はどのように行っているのか?24時間シートの更新がなかなかできないのはどのようにしたらいいのか?等々、それぞれ話合いながら相談しながら、時には「なるほど!」と思える答えが出てきたり、その場での答えが出ない事もありましたが、他施設の方と日頃の疑問等を話合うことで、教科書にはない、悩みやつまずき、工夫を話し合って「情報を共有する」時間を過ごしてもらうことができたのではと思います。

■ユニットケア部会 研修会アンケートを取りまとめましたので、掲載します。
 是非ご覧ください。

平成24年度 ユニットケア部会研修アンケート 集計結果

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